はじめに
起業してしばらく経つと、多くの経営者が同じ悩みを口にします。
「頭の中には事業のイメージがあるのに、うまく言葉にできない」
「補助金や融資で事業計画書が必要と言われても、何から書けばいいのかわからない」
「テンプレートを埋めてみたけれど、自分の事業の“らしさ”が出ていない気がする」
とくに創業3年目くらいまでは、目の前の売上づくりに追われ、じっくり事業の全体像と向き合う時間を取りづらいものです。その結果、「なんとなく走ってはいるけれど、本当にこの方向でいいのだろうか」というモヤモヤを抱えたまま、月末・年度末を迎えてしまいます。
本記事は、そんな“事業計画書が少しこわい”起業準備中〜創業3年以内の経営者に向けた、「事業計画書の考え方」ガイドです。
事業の目的・ターゲット・提供価値・収益モデル・実行計画といった「事業の軸」を整理しながら、
数字と行動をどう紐づけて計画に落とし込むかを解説します。
完璧な計画書を目指す必要はありません。
大事なのは、「どんな事業を、どんな人のために、どんなやり方で育てていくのか」という“事業の筋書き”を、自分の言葉で語れるようになること。
この記事が、事業計画書づくりの最初の一歩を踏み出すきっかけになればうれしいです。
目次
第1章 「事業計画書」は、経営の出発点
まずお伝えしたいのは、「事業計画書=きれいな資料」ではないということです。
計画書を作る目的は、金融機関や補助金の審査を“通すこと”だけではありません。
むしろ本質的な役割は、
- 事業の方向性を自分で確認する
- 周りの協力者に、事業の意図を伝える
- 日々の判断基準をそろえる
といった点にあります。言い換えると、事業計画書とは
「自分と事業との約束を書き留めたもの」です。
たとえば、こんな問いを自分に投げかけながら、計画書をつくっていきます。
- この事業を始める“理由”は何か?
- 誰に、どんな価値を届けたいのか?
- それをどんな手段で実現していくのか?
- 売上や利益は、どんなイメージで積み上げていくのか?
- 最初の1〜3年で、どこまで辿り着きたいのか?
こうした問いに対して、「何となく」ではなく言葉と数字で整理できるようになると、経営の見え方が変わっていきます。もちろん、最初から完璧に書ける人はいません。本記事では、経営初心者の方でも押さえておきたい“最低限のツボ”に絞って、事業計画書の考え方を整理していきます。
第2章 事業計画書は「経営の地図と羅針盤」
会社の経営をひとつの航海にたとえるなら、事業計画書は「航海の地図」と「羅針盤」のような存在です。
- 地図……これから向かう先と、その途中にある目印
- 羅針盤……日々の判断が、進みたい方向とズレていないかを確かめる道具
地図がなければ、そもそもどこへ向かっているのか分かりません。羅針盤がなければ、荒波の中で方角を見失ってしまいます。事業計画書も同じです。
長期の方向性(どこへ向かうのか)と、短期の行動計画(いま何を優先するのか)がセットで書かれていることで、
日々の判断に迷いが少なくなります。
大切なのは、最初から細かく書きすぎないこと。創業期の事業計画書は、次の3つがざっくり描けていれば十分です。
- どんな事業をやるのか(事業のイメージ)
- 誰に、どんな価値を届けるのか(ターゲットと提供価値)
- どうやって売上・利益をつくるのか(収益モデルと数字のイメージ)
この「大づかみの地図」をまず描いてから、徐々に細部を足していくイメージで考えると、事業計画書づくりのハードルがぐっと下がります。
第3章 事業アイデアを「誰に・何を・どう届けるか」に整理する
多くの創業者が最初につまずくのが、「自分の頭の中のアイデアを、相手に伝わる形にする」というところです。
頭の中には、サービスのイメージ、商品ラインナップ、やりたいこと…
たくさんのピースが浮かんでいます。しかし、そのまま書き始めると、
- 伝えたいことが多すぎて散らかる
- 一番大事なポイントが埋もれてしまう
- 読む人が「結局、何の事業?」と感じてしまう
という状態になりがちです。
そこで、まずは次の3つの問いに絞って考えてみます。
- 誰に(Who)
どんな属性の人に向けた事業なのか。
年齢、業種、地域、悩み、価値観などを、できる範囲で言葉にしてみます。 - 何を(What)
その人たちに、どんな商品・サービス・体験を提供するのか。
単なる機能説明ではなく、「どう良くなるのか」を意識して整理します。 - どう届けるか(How)
オンラインなのか・対面なのか、単発か・継続か、
どんな導線(紹介・Web・SNS・既存顧客など)で届けていくのか。
事業計画書の初期段階では、この「Who/What/How」がひとつのストーリーとしてつながっていればOKです。
たとえば、
「創業3年以内の小さな会社に向けて、事業計画づくりと数字の見える化をセットで支援するオンライン伴走サービスを提供する。既存の士業・金融機関からの紹介と、オウンドメディアからの問い合わせを主な導線とする。」
このくらいの文章が書けていれば、事業計画書の“骨格”はもうでき始めています。
第4章 数字のストーリーを書く ─ 売上・費用・利益のイメージ
事業計画書というと「数字の予測が難しい」と感じる方も多いのですが、ここで求められているのは、一円単位まで正確な未来の予測ではありません。大事なのは、次のような「数字のストーリー」が描けているかどうかです。
- どの商品・サービスが、売上の柱になっていくのか
- その単価と、1ヶ月あたりの件数のイメージはどれくらいか
- 原価や外注費など、売上に応じて増える費用は何か
- 家賃・人件費・システム利用料など、毎月ほぼ固定でかかる費用はいくらくらいか
- その結果として、利益はどのくらい残りそうか
たとえば、
- メインサービス:月額◯万円の伴走支援を◯社
- サブサービス:単発の相談メニューを月◯件
- 合計売上:◯万円/月
- 広告費や外注費を差し引いた粗利:◯万円/月
- そこから家賃・人件費などを差し引いた営業利益:◯万円/月
といった「ざっくりの絵」が描けると、事業の“持ち上がり方”がイメージしやすくなります。
創業初期は、数字が計画どおりに進むことの方が珍しいものです。それでも計画を書く意味は、
「この数字のイメージどおりにいかなかったとしたら、どこでズレが起きているのか?」
を後から振り返るための“ものさし”を用意しておくことにあります。
第5章 資金計画とキャッシュの安心度を押さえる
もうひとつ、事業計画書の中で大切なのが資金計画です。どれだけ魅力的なビジネスモデルでも、資金が先に尽きてしまえば事業は続きません。資金計画では、難しい専門用語よりも次のようなポイントを押さえておきたいところです。
- 開業時に必要な初期投資はいくらか
(設備、什器、初期在庫、Web制作、登録費用など) - 最初の数ヶ月、売上が安定しない期間を乗り切るために、
どの程度の運転資金が必要か - どのタイミングで黒字化し、現金残高がプラスに転じていきそうか
- 借入をする場合、その返済が毎月のキャッシュフローに与える影響はどの程度か
ここでも、1円単位の精度は求められていません。
重要なのは、
「このペースで行けば、◯ヶ月後には資金繰りが苦しくなる」
「ここで売上の柱が立てば、返済は十分にカバーできる」
といった“資金繰りの山と谷”を、事前にイメージできているかどうかです。
事業計画書に資金計画が書かれていると、金融機関や支援機関に対しても、「どこまで考えられているか」が伝わりやすくなりますし、何より経営者自身の安心感につながります。
第6章 実行計画とマイルストーン─計画を動かすためのスケジュール
事業計画書が“机上の空論”になってしまう一番の原因は、「いつ・何をするか」が曖昧なままだからです。
そこで、計画書の中に簡単なスケジュールとマイルストーンを入れておきます。
- 1年目:事業の立ち上げと、売上の柱づくり
- 2年目:サービスの磨き込みと、リピート・紹介の仕組みづくり
- 3年目:採用や外注も含めた体制づくり、次の事業のタネまき
といった「年ごとのテーマ」に加え、最初の1年についてはもう少し細かく、
- 1〜3ヶ月:市場調査・サービス設計・テスト販売
- 4〜6ヶ月:集客導線の強化・単価の見直し
- 7〜9ヶ月:リピート・継続メニューの整備
- 10〜12ヶ月:数字の整理と、次年度の計画づくり
という形で、四半期ごとの“やること”を決めておきます。
ここでのポイントは、「やることを増やす」のではなく「あえて、やらないことを決める」という感覚です。
あれもこれも詰め込んでしまうと、結局どれも中途半端になってしまいます。
事業計画書は、“がんばりたいこと”を書き連ねる紙ではなく、「いま、このフェーズではここに集中する」と自分に約束する紙と考えてみてください。
第7章 計画を「書いて終わり」にしないための予実管理
どれだけよくできた事業計画書でも、書いた後に一度も開かれなければ意味がありません。
計画を“生きた道具”にするためのカギが、予実管理です。予実管理とは、「予算(予)と実績(実)を、定期的に見比べること」。とはいえ、最初から細かくやる必要はありません。創業期であれば、次の3つだけでも十分です。
- 売上高(全体)
- 売上総利益(粗利)
- 販管費(人件費や広告費など、毎月かかる経費の合計)
事業計画書に書いた数字(予算)と、実際の数字(実績)を月に1回見比べてみるだけで、こんなことが見えてきます。
- 思ったより売上単価が低い → 商品構成や値付けの見直しが必要かもしれない
- 広告費がかさんでいる → 別の集客チャネルを試してみる余地がある
- 想定より粗利率が高い → ここを伸ばすと事業が安定するかもしれない
予実管理の本質は、「外れたこと」を責めるのではなく、「なぜ外れたのか」を落ち着いて振り返ることにあります。
事業計画書は、この“振り返りの物差し”としても機能していきます。
第8章 BanSoで実践する「動く事業計画書」
ここまで整理してきた事業計画書の考え方は、紙とエクセルだけでも実践できます。
一方で、起業準備中〜創業まもない経営者にとっては、
- 日々の業務に追われて、数字の整理や振り返りが後回しになる
- エクセル管理がだんだん複雑になって続かない
- 計画と実績を見比べても、次の一手がなかなか見えない
といった悩みが出てきやすいところでもあります。
BanSoは、こうした「続ける難しさ」をサポートするための
“AIと専門家が伴走する経営プラットフォーム”です。
事業計画書づくり・見直しの文脈でいうと、次のような点が特徴です。
- 専門家とのチャット相談機能がある
事業計画の方向性や、数字の見方・優先順位について、ひとりで悩まず相談しながら整理できます。 - アクション管理・進捗管理機能を提供
事業計画書に書いた内容を“現場の行動”に落とし込み、「やると決めたことが、どこまで進んだか?」を継続的に振り返ることができます。 - “AIと専門家が伴走する経営プラットフォーム”を標榜
数字の整理や分析をAIがサポートし、専門家との対話を通じて「次の一手」を一緒に考えていく、という役割を担っています。
事業計画書は、書いて終わりではなく、「事業を動かすための設計図」です。
BanSoのようなツールを組み合わせることで、その設計図を、日々の意思決定や行動に自然とつなげていくことができるようになります。
第9章 まとめ──計画は“事業と自分の対話”で育っていく
最後に、ここまでの内容をあらためて整理しておきます。
- 事業計画書は、「事業の軸」をつくるためのツールである
- 完璧な正解を書くことより、「自分の言葉で語れること」が大切
- 「誰に・何を・どう届けるか」と、「どう数字と資金をつくるか」をセットで考える
- 計画は、一度書いたら終わりではなく、予実管理と振り返りを通じて“動かしていく”もの
- BanSoのようなプラットフォームを活用することで、
計画づくりから実行・改善までのサイクルを、ひとりで抱え込まずに回せる
起業準備中〜創業3年目くらいまでの時期は、どうしても売上づくりや現場対応が優先になりがちです。そんなときこそ、「月に一度、事業計画書を開いて、自分と対話する時間」を少しだけでも持ってみてください。
- いまの事業は、どこに向かおうとしているのか?
- この3ヶ月で、何を優先して育てたいのか?
- 計画と現実の間に、どんなギャップがあるのか?
この小さな習慣の積み重ねが、振り返ったときに「ここが転機だった」と感じられるタイミングにつながっていきます。事業計画書は、誰かに見せるためだけの“書類”ではありません。あなたと事業のあいだで、何度でも書き直していい“対話のメモ”です。
今日から少しずつ、自分なりの言葉と数字で、事業の軸を描いていきましょう。
この記事が、その第一歩のお役に立てばうれしく思います。
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事業計画書を「作って終わり」にしないための実行・改善の考え方を紹介。
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地域密着型の事業で、どのように事業計画書を描けば良いのか。
経営理念・価値提供・地域連携の視点から、計画書の深掘りポイントを解説。
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事業の目的・ターゲット・提供価値・収益モデルなど、
事業計画書の核となる「枠づくり」をわかりやすく整理した基礎ガイド。
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● BanSoと事業計画との親和性(連載シリーズ 第1〜10回)
事業計画とBanSoの組み合わせが、
創業期〜中小企業の“実行力”をどう支えるかを解説したシリーズ。
計画作成・見直し・改善を続けるための考え方がまとまっています。
👉 https://banso.info/category/banso-keiei/