- 会社名
- 非公開(匿名事例)
- 事業内容
- 集合住宅の大規模修繕工事(外壁補修、防水、塗装など)
※本事例は実際の支援事案をもとに構成しており、事実に基づいて記載しています。内容には一部表現の整理・編集を行っています。
集合住宅の修繕を主業とする中小の建設会社が、決算の信頼性を失い、資金繰りの危機に直面していた。
BanSoの導入を機に、経営改善支援の第1号案件として、“再生の構造”を一つずつ描きなおす日々が始まった。
本事例では、数字と行動を結び、再建に向き合った現場のリアルな軌跡を紹介する。
「最初は“計画なんて現場の人間には無理だ”って思ってました。でも今は、数字と向き合うことが、逃げ道を塞ぐんじゃなくて、“光を当てる”ことなんだとわかってきました」
そう語るのは、この経営改善支援に取り組んだ建設会社の代表。
BanSoを導入し、最初に歩み出したその過程は、“再生”を形にしていく営みそのものだった。
危機は“静かに”やってきた
同社は、分譲マンションの外壁補修、防水、塗装といった大規模修繕工事を主に手がけてきた。
施工管理からアフター対応まで一貫して担い、地域で一定の信頼を築いてきたが、コロナ禍を境に状況は一変する。
マンションの管理組合で総会の開催が遅れ、着工が延期。人員体制の乱れや会計処理の遅延も重なり、資金繰りは徐々に悪化していった。
そして、経営を揺るがす最大の要因となったのが、「帳簿と決算」の信頼性だった。
会計不正とは言えないが、信頼はなかった
長年依頼していた税理士法人による会計処理は、実態を正しく反映していなかった。
工事原価と粗利が一致しないまま仮締めで計上され、債権債務の整理も未着手。
その結果、現預金と売掛金の重複計上が起き、実際には資金繰りが限界に近づいていたにもかかわらず、損益計算書上は“黒字”として処理されていた。
金融機関からの反応は厳しかった。
「これは決算じゃない、“見せかけ”です」
「申告書に捺印はあるが、実務には通らない」
「これで融資を受けていたなら、むしろ説明責任が問われます」
「審査」だったはずの面談が、「整理」の対象へと変わる――その瞬間の空気を、代表は今も忘れられないという。
だが最も深刻だったのは、こうした状況を「なんとかなる」と見過ごし、数年にわたり放置していた経営側の“鈍感さ”だった。
SDXCが入った日──会社が動き始めた
2025年春、SDXC(サスティナビリティ・DX推進協議会)による支援が決定。
代表の言葉を借りれば「あの日が会社にとっての“再起動”だった」。
BanSoは単なるクラウドツールではなく、支援者と共に“言語化しながら考える空間”を提供する仕組みだった。
帳簿を整えるだけでなく、「なぜ利益が出なかったのか」「この仕事を取る意味は何か」といった根本的な問いに立ち戻る土台をつくった。
BanSo導入:まず始めたのは“動く”こと
導入初期に行われたのは、経営に必要なアクションの整理と、行動レベルへの落とし込み。
「誰が」「いつまでに」「何を」「どう進めるか」を明文化し、クラウド上で記録・共有する体制が整えられていった。
実際の改善アクション例
- 【2025年9月~】売上構成の多様化に向け、ターゲット業界を絞った新規営業キャンペーンを年2回実施
- 10月~:売上上位5社の依存度を四半期ごとにチェック
- 案件別の「原価見積と実績」の差異確認体制を構築
- 12月~:値引き判断ガイドラインを整備し、現場裁量ルールを1%未満に明文化
- 年末までに業務手順書と役割分担表を作成・全社共有
- 【2026年1月~】資金残高に基づくダッシュボード型の意思決定支援表を運用開始
- 同年4月~:資金繰りレビューを四半期単位で定期化し、予測機能を活用
金融機関との“協議”──共に考える場へ
帳簿を正しても、行動が変わらなければ何も始まらない。
再生可能な企業は全体の20%にも満たないとも言われるが、BanSoと伴走者の存在があることで、その可能性は飛躍的に高まる。
それを証明したのが、金融機関との“協議”だった。
2025年6月、複数の金融機関と同席して行われた面談では、これまでにない前向きな対話が交わされた。
「前回は“確認”でしたが、今回は“共通の前提を持った協議”になっていますね」
画面に映されたのは、BanSoで出力された支援レビュー記録、財務3表、行動ログ、進捗KPI。
そしてその横には、「この企業がどのように改善に取り組んできたか」を支援者が説明する姿があった。
「彼らは“説明している”のではなく、“修正してきた”んです」
会議室には、かつての不信感ではなく、「再評価」の空気が広がっていた。
数字と現場の“間”を埋める視点
半期時点での試算表上の売上高は約5,800万円。
粗利計上には遅れがあるものの、過去の原価構成から推定される粗利率はおよそ19%。
BanSo側の分析でも「この水準であれば、わずかに利益が出ている可能性が高い」と評価された。
重要なのは、数値の意味が読めるようになったことだ。
- 請求予定と入金予定を工事明細と照合
- 受注明細(約1.7億円)をもとに月次着地と案件別進捗を計算
- 支出タイミングを現場単位で予測し、資金繰りの“谷”を事前に把握
BanSoが照らすのは「正しさ」ではなく「進み方」
支援の現場で繰り返し問われるのは、「正しい答え」ではない。
- どこに進めばいいのかがわからない
- 今のやり方が間違っているのかもしれない
- でも、何を変えればよいのかわからない
そんな“宙ぶらりん”な不安の中で、BanSoは「問いを置くこと」から始まる。
「いま、動いているのは誰ですか?」
「何のために、どの数字を見て、その行動をしていますか?」
この問いの前では、経営者も社員も支援者も、対等な立場になる。
「支援って、“指導されること”だと思ってました。でも実際は、“一緒に迷ってくれる存在”なんですね」
“構造”という地図ができるまで
経営の課題は、個別のミスではなく「構造がないこと」から生まれる。
BanSoでは、アクションを単体で捉えず、それがどの構造の中にあるのか、何を目指しているのかを明らかにしていく。
たとえば営業活動ひとつとっても──
- なぜその案件を追うのか
- どの売上構成に関係するのか
- キャッシュインの時期はいつか
- 原価率や収支バランスは計画と一致しているか
こうした視点が、「振り返り」から「未来を選ぶ会話」へと進化していく。
最後に:すべての中小企業に“問い”を
この事例は、BanSoが単なるDXツールではなく、「再建と成長の両立」を支えるプラットフォームであることを示している。
どれだけ状況が厳しくとも、「問い」があれば希望が生まれる。
問いを置ける場、問いを支える伴走者、問いを行動へとつなげる仕組み。
それらがそろったとき、再生は遠い夢ではなくなる。
BanSoは、問いを置く装置として、これからも経営の未来に寄り添い続ける。